どんなときでも真っすぐ過ぎる僕の片割れ。
いつでも一直線。
僕のことなんて置いていっちゃう。
だのに
なんでこんなときばかり

Sweet scent   


君は甘い匂いがする。
匂いだけじゃないな、雰囲気、纏う空気。そんなのが全部甘い気がする。
そんな君が、僕の片割れだって
初めて紹介された
あの日から
僕はその甘さにすっかりやられてしまっていること
知っているかい?

君が見ていいのは僕だけなんだよ?
他のやつには存在すら教えたくない。

だから俺は、俺の存在で君を隠してしまおう。
そうすれば、君は



某国国会議事堂、廊下。
曲がり角で不意に二人は、ばったり真っ正面に向かい合った。




慣性の法則に抗いきれず倒れそうになるのを、アルフレッドが、抱き留めてくれて。
地面と仲良くなるのはなんとか免れた。

心配そうに青い瞳が揺れる。

「あ、ありがと」
「全く、君はとろいね」

思っていたより逞しい腕が
ぎゅう、と自分を抱き込むのが恥ずかしくて。
つい早口に御礼をいえば
からかい半分の言葉が返ってくる。

「わ、悪かったね」

そう言って、離して、と胸板を押す。
しかし抱きしめた腕が緩む気配は無い。
「…アル?」
「…なんだい?」
訝しみながら声をかければ、アルフレッドは真剣そうな顔のまま
じっと自分を見つめたまま。

レンズに僕の顔が映ってる。
…僕のレンズには君が映ってて、それに見とれてたりして。

なんて馬鹿なこと考えていたら
不意に思い切り抱きこまれた。


「…!ちょっ…!」
「…」
「アル…っ」

廊下が無人で助かった。
じゃなくて
アルの身体、逞しいや
じゃなくて…!

「やっぱり君、甘い匂いがするね」

ぐるぐるしはじめた僕をパッと離して、アルは小さく笑った。

「なっ」
「甘すぎて駄目だね」

DDDD、と笑って、
チュ。と
唇に、唇を押し付けた。

「…!」
「さあっ!会議に遅れるぞっ!先に行くからなっ」
がばっと立ち上がり、さっさと歩き出してしまったアルフレッドの背中を唖然と見送る。

「な…なんなんだよぉ」

慌てて立ち上がり、ふと香った匂いに首を傾げる。
すんすんと匂いの元を探せば、どうやら僕から香ってるみたいで…

「…この匂い…バニラ?」

アルがよく食べてるアイスの匂いだ。

「…いまので移ったのかな」

なんだか妙に恥ずかしさが込み上げてきて、思わず腕を振り回した。


マシューを置き去って、俺は廊下をまっすぐ歩いていた。
鼻腔にはまだ、マシューのにおいが残ってるみたいで
・・・・・ああ!くそ!!!
絶対顔赤いぞ!
おかしいじゃないか!
マシューに俺のにおいをつけて、
周りにマシューの存在をわからなくさせてやろうって
そう思ったのに・・・
俺にマシューのにおいがついちゃったじゃないか!
こんな・・・・

すん、と袖をかげば、甘いメイプル臭。
どくん、とはねる心臓。

ああああもう!困るよ!

恥ずかしいのと、少し嬉しいのが胸の中でぐるぐる込み上げてきて、思わず腕を振り回した。