フェリちゃんとロヴィーノは兄弟やのに
ローデリヒと俺が別々のところにつれてってもうた。
兄弟がバラバラってのは、悲しいやんなあ。
だから、俺はちょくちょくロヴィーノを連れてローデリヒの所へといくことにしていた。


Gano por palabras


「にいちゃーーーん」
「フェリシアーノ!元気だったかこの野郎」

ヴェーヴェー言い合う二人に、なんやすごく微笑ましい気持ちになってくる。
隣を見れば、ローデリヒも微笑んでいた。
ふと、机に添えるように置かれたローデリヒの手が目に入る。
綺麗な音を奏でるために作られたような、美しい指。
そこに嵌められている指輪が、きらりと光を反射した。
俺とおそろいのそれ。
・・・・いわゆる結婚指輪だ。

政略結婚とはいえ、俺らって・・・・その、夫婦やん、なあ。

そう思ったら、なんや無性に恥ずかしぃなって。

「・・・どうか、したのですか?」
「え?いや、なんでもあらへんよ?」

ひょいっと覗き込まれて、心臓が跳ねる。
綺麗なアメジストの瞳がふわりと光って、俺の心を見透かされたのかと思った。

「顔が赤いですよ?熱でもあるのではないでしょうね?」

どきどきする俺の額に、冷たいものが触れた。
それがローデリヒの指で、俺の髪を掻きあげたのだと気づく。

・・・でもそんなことよりも

目の前に、綺麗な顔が、ぐっと近づいて。
こつん、と
俺よりも体温の低い
額が

「熱はないようですね・・・」

ほんの数センチ先の、唇が言葉を紡ぐ。
吐息が触れる。



ちょ、無理やん。


「!?」

ふわりと、彼の作るザッハトルテのような、甘い香りが
唇から伝わってくる。

「何をしているのですか!この・・・・お馬鹿さんが!!」

俺んところのトマトよりも真っ赤な顔したローデリヒが
唇を押さえて怒鳴った。
ぽこぽこと零れる怒りというよりは恥じらいの煙に
自分がなにをしたのかようやく理解した。

「あの!いや!だって!・・・・目の前に!お前・の顔、が・あったんやもん!」

思わず言葉が宙を舞う。
だって仕方ないやんか。
あんな
あんな近くでお前の顔が
したら、
なあ?

「熱を測っただけではありませんか」
「せやかて・・・」
「まったく!」
「…ちょおキスしただけで、そない怒らんでも」

ついそう呟いた俺に食って掛かるように、ローデリヒがぽこぽこと煙を上げた。

「貴方はいつも唐突過ぎるのです!せめて一言断りを入れてから行動を起こしてもよいのですよ!?」

きっと睨む
その顔も可愛ええなあ。
なんて言ったら、また怒るかな。

「そなら、キスして、いい?」


一瞬、きょとんとして
また、トマトみたいにぽぽっと色づく。

「なっ」
「断りをいれれば、ええんやろ?」
「そ、それは・・・」
「なぁ?キスさせて?」

何を言っているのですか、このお馬鹿さん!って怒鳴るかな?と思ったけど
自分で断りを入れれば、と言ったばかりやからNOと言えんのやね。
そっと、手を握り、指先で指輪をなぞる。

「・・・・させてぇな、ローデリヒ・・」
「・・・・仕方ありませんね、少しだけですよ」

ぽっぽっと顔を真っ赤にして
ローデリヒは小さな声でそう言った。






おまけ


「ねえねえ、兄ちゃん」
「煩いぞ、静かにしてろよ。見てんのバレたら怒られんぞ」
「うん・・・」
「・・・なんだよ」
「アントーニョ兄ちゃん、兄ちゃんじゃなくてPadreって呼んだほうがいいのかな?」
「な!なにいってんだ馬鹿!」
「ヴェー」





***
2008/08/24

あれ?墺西と言っておきながらこれはあれですよね
西墺?(笑
まあ、夫婦はどっちでも好きですよ。と言っておこう。

ちなみにタイトルは西語で「口で勝つ」(笑