演奏家にとって、手は命みたいなもんやん?
やのにあいつ、毎度盛大に爆発音立てながら料理すんねん。
出来上がるもんは、ものっすごく美味いねん。
せやけど…


「今日は何を作ってくれるん?」
「リンツァートルテにしようと思っていますが?」
「わぁ、楽しみやわぁ。ほな手伝うな?」
「ありがとうございます。では、これを溶いてくれますか?」


手際はすごくええねん。

まるでピアノ奏でてるように優雅に指が動いて、材料が料理へと変貌していくんや。


一緒にやっとると、いつ爆発させんねんって思うんやけど…



Geisteszustand der Explosion



「貴方と一緒ですと手際がよくて助かります」

紅茶とトルテを差し出してそう褒めてやると、アントーニョは眉間に皺を寄せたまま、不思議そうに私を見る。

「…なんですか?」
「ぅん…あんなぁ、今日は全然平気やったやん?どうして一人で料理作っとるときはあんなん爆発すんのん?」


その問いに、つい身が固まってしまう。

そんなこと、答えられるはずがない。



「ば…爆発のことなど、お忘れなさいっ!」
「そっ、そない怒ることないやんっ」
「お黙りなさい!いいですから、さっさと食べておしまいなさい!」

ポコポコと煙を立てれば、諦めたのか目の前のトルテに口をつけた。

「…ん〜〜っvv相変わらず、サイコーやぁんvv」

目元をだらし無く緩ませ、幸せそうに食べるその姿に、こちらまで幸せになってくる。



…それにしても。

ぱくりと一口含んだトルテの程よい甘さに目を細め、目の前のお馬鹿さんを見つめた。





言えるはずないじゃないですか。



一人で作っていると、

隣にいない貴方を思い出して…
一緒に作っているときの幸せな時間を思い出して…

作業がはかどらないなんて。

貴方に早く食べさせたいと慌てて、ミスをしてしまうなんて。


  絶対に言えません。


心のなかでそう呟いて、少し冷めてしまった紅茶をくいと飲み干した。



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なんか貴族→おやびんみたいになってきた。
独墺でもありな内容だったんですが・・・
(バレンティーノのチョコの件もあるし)
でも、ルートは手伝ってくれなそうだからねえ・・・
フェリのときに片付けしかしなかったやつだし。

というか独伊は公式だし(もにょもにょ)
(いま”どくい”ってかいたら変換一発だった罠・・・PC、おまえもか)

ちなみにタイトルは独語で爆発の心理。
さすがにオーストリアドイツ語で翻訳する術はなかった・・・
(オーストリアドイツ語=ドイツ語の訛りのようなもので、オーストリアで話されているドイツ語の主流、だそうだ)