道具屋なんてさびしいもの。
思い思いに冒険者がドロップ品を売って
回復剤を買い込んで出て行く。

つまらない日常。
…今日、そんな生活も悪くないと思える人に会った。



B+W 1
彼らの日常 前編



「すいません」
「いらっしゃいま…!!!」

いつもどおり振り返って、私は固まった。

おでこがキュートな金髪のハイプリーストが、私に微笑みかけていたからだ。

「これ、買い取りお願いしていい?」
「あ、は・・はい!!」

思わず両手で受け取ったのは大量のゼロピー。

「…以上で、よろしいんですか?」
「うん」

にっこりと笑いかける彼に頬が熱くなるのを感じながら、慌ててゼロピーの数を数える。
…えっと、全部で80個ね。

「ちょ・・・っ!シロさん!」

バタン!と大きく扉が開いて銀髪のプリーストが顔を出した。
こっちもとびきりの美人。
無造作に伸ばした銀髪を揺らし、つかつかとハイプリーストに歩み寄った。
私の手の中のゼロピーを見る。

「やっぱり!また青箱負けたのかよ!?」
「う…うるさいな!いいじゃんか!」
「よくねえ!…こんなに負けて…いくつ買ったんだ!?」
「…100」
「で?残りは!?」
「……」
「いいなさい」

…そっと差し出したのは緑ハーブ数枚と花束。

「残りは」
「…赤ポは、全部飲みました」
「…あんたなあ」
「とりあえず、これお金に戻すから!ね?」

ハイプリーストの言葉に、プリーストははっとして私を見た。
慌ててハイプリーストの胸倉を掴んでいた手を離す。

「…あ」
「…こちら、よろしいでしょうか?」

私も慌ててにこりと笑みを浮かべた。

「「お願いします」」

二人の困ったような笑顔に、意識が軽く遠のく。
すんでのところで耐えて、私は2400zを渡した。

そっと、お金を受け取るハイプリーストにキャンディーを二個、一緒に渡した。

「…!」
「よろしかったら、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」

本当にうれしそうに笑って、ハイプリーストはキャンディーをポケットにしまう。
と、待ちかねたのかいつのまにか戻ってきていたプリーストがハイプリーストの後ろに立っていた。
肩をつかまれて、ハイプリーストはひっと息を呑む。

「…シロさん…なにもらった?」
「え・な、なにも?」
「…”スティール”っ!」
「うそっ!」
「…できるわけないじゃん。いいから出せ!」
「…ううっ…”テレポート”っ!!」
「あ、この…っ”速度増加”!!」

あっというまにいなくなってしまった二人を見送って、受け取ったゼロピーをそっと自分のポケットにしまったのだった。


続く






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馬鹿二人珍道中です(笑
この二人は本当に貧乏です。
なんで貧乏なのかは…うん…後々(笑