剣を取ろうとは思わなかった。
魔力に頼るのも違うと思った。

ただ、力は欲しかった。


魔を弾く力を
魔を滅する力を
神の加護を具現する力を

プリーストになりたい。
そう思った。

そのために、アコライトになった。


進む道の標は



勉学に励む友を横目に、俺は狩りを続けていた。早く強くなりたくて。
友はそんな俺を見て支援を買って出てくれた。
さらに強く速くなる。
友の支援の練習にもなる。


そうしているうち、気付く。

オレハ、ナニニナリタインダッケ?


俺にあるのはこの拳と、ささやかながら培った魔法力。
俺一人を守る程度のそれは支援をするなんてとんでもないくらいにしかなくて。

周りの友はいう。

「モンクになるんでしょう?」

…確かに、神の神罰の代行者、モンクもいいと思う。
でも。

思い悩む俺に、一人の友人が声をかけてくれた。

「俺の知り合いに、元モンクがいるから、話聞いてみたらどうだよ?」

そうして俺は、その人に会うことにした。



青い髪が風に揺れていた。
彼は上位一次たる証の青いアコライトのローブを少し窮屈そうに着て座っている。
俺を見てにこりと笑いかけた。

「君がクロムだね。初めまして、蒼琉だ」
「はじめまして」

差し出された手をぎゅっと握り返す。
ゴツゴツとした手の感触が、この人がいかに己の身を武器に戦ってきたのかを伺わせた。

「ロンから話は聞いてるよ…いい感じに鍛えてるね」
「ありがとうございます」

褒められているのはモンクとしての将来性だろう。気落ちする俺を見て蒼琉さんは笑った。

「プリーストになりたいんだよね?」

頷く俺に納得して、彼は俺を見つめた。
空の果てのような濃紺の瞳が俺を射抜く。
その目が問いかけてくる…何故プリーストにこだわるのかと。

「…キリエ」
「ん?」

思い出したことをつい口にしてしまった。
彼は続けてというように頷く。

「キリエエイソン…」
「ああ…防御の祈りだね。それを習得したい?」

頷くと、瞳を緩めて彼は笑った。

「なんだ、答え出てるんじゃないか」
「?」

「なりなよ、プリーストに」

ボン、と軽く背中を押すようにそう言って。
蒼琉さんは笑った。

「…でも、俺」
「いいんじゃない?殴りだって立派なプリーストだよ」

グッと拳を突き出して、蒼琉さんは笑った。

「キリエはプリしか取れないんだから、存分に取ってその力、発揮してきなよ」


誰かに言って欲しかった。俺はプリーストになってもいいんだよって。
その答えを、目の前の彼がくれた。

彼が突き出すその拳に背を押されて。


そうして俺は、プリーストになることにした。





「なんでキリエなのさ」

シロさんが心底不思議そうにそう尋ねてくる。

「だって便利じゃん?」
「…ま、まあね…」
「散々助けられてるし…」
「?」
「…なんでもねえッス」
「…ま、いいけどね。んじゃ続き行きますか」
「了解」

構えを深くした俺の後ろから加護の光が降りてくる。
温かな光に、俺は守られて…


そうして俺は進んで行く。
この道を。


**********

クロムが何で殴りプリになったのかという話でした。
スカイ&ロン&レン&クロムは同時期にアコで大聖堂にいたことがあるという設定があります(笑

スカイ達がどうしてそれぞれに進もうと思ったのか。
それもは追々・・・・(笑