転職の追い込みにアインブロックへ行っていたヴェルドが、ようやく帰ってきた。
商人からアルケミストへと変わったヴェルドは…なんだかぐっと大人びていて…

「…ただいま…蒼」

ほんのちょっと見下ろしていた顔が
ほんのちょっと見上げないといけないくらいになっていて…
久しぶりすぎるその視線に恥ずかしくて俯いた。



新しい君新しい僕ら



「…蒼?」
「あ、いや…おかえり…おめでとう」

しどろもどろにそう言うと、ヴェルドの手が頬に触れる。

「…ヴェル」

言葉は唇の中に吸い込まれた。
…久しぶりの口づけは甘くて、少しせつなくなった。

「…んっ…ん…ふぅ」
「…っと」
「…?」
「ずっと、触れたかった」
「…っんぅ…」

耳元に囁かれてびくりと身体が震える。

「…お、れも」
「蒼…」







「そうだ、逢わせたいやつがいる」

シャワーから戻ったヴェルがベッドに横になったままの俺の髪を撫でてた。
何事かと視線を送ると軽く目配せし、手をそっと宙へと伸ばす。

『コール ホムンクルス』

ボウッと光が舞う。


光が急激に収縮して形を作った。





光が止む頃にはヴェルのそばで
青い鳥が小さく羽ばたいていた。

「…ホムンクルス!」

小鳥はくるりとヴェルのまわりを回って、俺の目の前に止まった。
身体を起こして見入る俺に不思議そうに首をかしげている。

「名前は?」
「青鈍」
「アオニビ?」

どんな意味なのかと見上げると、ヴェルは困ったように首をすくめた。

「…あんたの髪の色」
「?」
「ちょっとくすんだ青をアマツでそう言うんだそうだ」
「…へぇ…」

なんだか恥ずかしくてつい自分の髪をまじまじと見てしまう。

「…よろしくな青鈍」

指を伸ばすと返事をするように指にすり寄ってくる。

「あっ」
「な・何?」
「俺にはそっぽ向いてるくせにっ」

このやろうと言わんばかりに青鈍に手を延ばした。

「この…っいてっ!つつくなっ!」

青鈍はヴェルドをからかうようにくるりと舞って俺の肩にとまる。
スリスリと頬に擦り寄って、音符のエモまで出していた。
がっくりとするヴェルドに笑って、青鈍を撫でる。

「なんかしたんじゃないのか?」
「…いや、まだ生まれたてで外界に慣れてないんだ。だから警戒してるらしいんだが…なんであんたにはすぐ慣れてんのさ…」
「…人徳?」
「言ったな」
「ちょっ…あっははは!や、やめ…っ…っふへへ」

がばっとベッドに乗り上げて俺の身体をくすぐりだす。
身をよじって笑い転げる俺を見て、青鈍はパタパタと舞い上がった。

「…っ、いてぇえっ!」

パツンという小気味よい音と共に、ヒットの数字が宙に舞う。

「…?」
「こいつ…俺を攻撃しやがった」

青鈍はうろうろと周りを羽ばたいてヴェルを見ている。

「…俺をいじめてると思ったのかな?」
「なにをっ?!」

ぎょっとするヴェルを横目にさもそうだというように青鈍は翼を広げた。

「…こいつ…」
「賢いやつだな〜」
「…蒼」

おかしくて声を立てて笑うと、ヴェルドがなさけない声で俺を呼ぶ。

「ニビ、お父さんのことをあんまりいじめちゃ駄目だぞ」
「…お父さん?」
「違うのか?ヴェルが錬成したんだからお前がお父さんだろ?」

青鈍のぽよぽよした腹を突きながら聞くと、ヴェルドは真顔で俺と青鈍を見た。

「…な、なんだよ」
「…じゃあお母さんか」
「はぁ?」

俺を指差してとんでもないことを言いだす。

「なに言ってんだよ」
「父がいれば母は必要だろ?現に俺達は愛しあってんだし…」
「…それとこれとは話が…」
「違わないって…ニビもわかったって言ってる」

そう言われてちらりと見ると、青鈍は綺麗なオレンジの瞳をこちらに向けていた。

「…いや、やっぱりそれはおかしいって!」

危うくうなづきかけて首を振るとヴェルドはチッと舌打ちをした。

「…まあいいけど。とりあえず顔見せ終わり」

な。と青鈍と俺を見て笑い、ヴェルは腕をまくった。


「さて、飯にしようぜ?今日は俺が作るから、あんたシャワー浴びてこいよ」

ちゅ、と軽くキスを落として台所へと向かうその姿は相変わらずの彼で。
耳が赤くなっているのを見つけて笑いを堪えながら、
好意に甘えシャワーを浴びようとベッドを降りた。



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ヴェル転職話でした。
どうも最終的にアインってのがこいつら育ててるときのルートでした(笑
蒼もヴェルもシオも翡琥も紅さんも・・・・以下略。
ただ恐ろしいのは蒼さんは最終的には南いったけど48くらいまで北アインだったこと・・・
いま考えるとなんでそっちなんだ!?!?とwww