Segretezza assoluta



もし、スパナが正一と計画してたら。
満々捏造です。






《ホワイト・ブラック、両スペルのCランク以上の隊員に通告。ボンゴレ基地への攻撃を開始します。隊員は速やかにオーバールームに集合してください。繰り返します、ホワイト・ブラック、両スペルのCランク以上の隊員・・・》

チェルベッロの館内放送が耳にうるさい。
廊下では隊員たちが殺気立って走っている。
でもウチは作業部屋でモスカ達とゆっくりとした時間を過ごしていた。

ウチは、ただ一人の命令にしか、従わない。
だから・・・正一がなにも言わないから、ウチはここにいてもいいんだ。



ウチと正一の間で使う通信は大きく2種類ある。
通常使われる個人モニタ間でのそれと
二人だけでやり取りをしたい時に使う特殊回線。
これは正一とウチが高校のときに互いの情報をやりとりするのに作った
いわゆるオリジナル回線。
ある種の地下ネットなんだけど、ウチと正一が作ったそれは
上位回線並のセキュリティを誇っていて
もちろんボスも知らない、本物のUna linea speciale。



ウォンウォン。モスカのおなかの中が大きく鳴った。

「あ」

修理しにいくように工具を手に持ち、ウチはモスカの中に潜り込んだ。
しかりとハッチを閉めて、座席の下に差し込んであるゴーグルをつける。
ヴン、と小さな音を立て、目の前の画面が揺らぐ。


ザラリとした画面。
そこに文字が躍る。


識別・・・・・・・ザザ・・・・・
     ・・・ザー・・・受信、酢花゜
  確認・・・・
      クリア。
 音声認識・・・・・ピー・・・・・・・・・・・・
        ・・・・音声の再生

  ・・・・・ 者 正一 認識完了。
・・・・・・・・・・・・・ピピピ。


completamente buono



画面に浮かんでいた文字がぶつんと消えて、正一の名前だけがうっすらと浮き上がる。
ザーと薄くノイズ音。


  "やあ、スパナ"

聞きなじみのあるやや深いテノール。
正一の声は耳にとても心地よい。

「正一、久しぶり」
  "ごめんね、いまだいじょぶだった?"
「ん、大丈夫。・・・・どうかしたのか?」
  "・・・・うん"

正一には、ウチには言えない秘密がある。
そのためにお腹ゴロゴロになっても頑張ってるって知ってる。
ハッチをしっかり閉めたのも、わざわざモスカの中に隠すようにこの回線を入れたのも
どうやらボスはこの中の至る所を監視してて、
正一はこの回線があることをボスに絶対に知られたくないらしいから。
ここにいれば、完全にウチの領域。
誰にも知られずに、正一と話が出来る。

で、正一がこれを使うのは大概自室のトイレの個室。
さすがにトイレには部屋のような厳重な監視がついてないし、
正一はおなかがゴロゴロになりやすいからトイレに篭っててもだれも怪しまないからだそうだ。
さすが正一。
まさかトイレにそんな回線を繋ごうなんて、ボスだって思いはしない。


ついぶるぶるしてしまったウチに気づかず、
正一は、すごく深刻そうな声で、呟いた。

  "とうとう、来たみたいなんだ"
「・・・・例の、Xデーか?」
  "・・・・・・・・・うん"

Xデーとは、正一の秘密が大きく動き出す日。
前にほんのちょっとだけ聞いたことがある。
正一は苦しそうに眉間に皺を寄せて
『僕は、待ってるんだ・・・時を』
・・・と、それだけ教えてくれた。

とうとう、その待ってた時とやらがきたらしい。

「で、ウチはなにをしたらいい?」
  "スパナ"
「大体予想できる。正一は極秘だから動けないんだろ?」
  "・・・・スパナ"

大丈夫。わかってる。

正一はウチの大切な人。
ウチは正一の部下。
他は聞きたくないけど、正一の命令は聞くよ。

「・・・・正一?」

少し鼻をすする音。
もしかして泣いてるのか?

「大丈夫か?お腹ゴロゴロ?」
  "ご、ごめん。大丈夫・・・君にお願いしたいのは、僕の本心"
「・・・本心」

意を決したように呟いた声からは、悲しみは消えていた。
それと交代に、強い意志。
ああ、逆境に立ち向かうときの正一の声だ。


  "たぶん。そう遠くない時間にボンゴレがここを強襲してくる"
「ボンゴレが?」
  "そう。で・・・君に頼みたいのは ・・・ ・ ・・"



正一が言ったのは、ウチが思っていたのとは真逆のこと。
あまりにも予想外な言葉に、口に銜えていた飴はどこかへ落ちてしまった。

「・・・・正一、それは正気か?」
  "ああ"

言葉に淀みはなく。
それは本心なのだと再確認した。

正一は、いつでも全体を見透かしている。
きっと考えがあっての言葉なんだろう。


  "このあと、僕は司令室へ戻って、司令官にならなきゃならない。そのときにはきっと、今言ったのとは逆のことを君に命令すると思う"
「逆のこと」
  "そう"

それはつまり、どうすればいいんだろ。

  "そのための場所として、4番ドックを君のために開放しておく。そこは監視も全部切っておくから、時間稼ぎにはなると思うんだ"
「わかった。司令官の言うこと聞いてるようにしながら、正一の本心をしっかり鍛えてやる」

  "・・・・ごめんね"

不意に、正一の声のトーンが落ちた。

  "もし、君の居場所や、きみのやってることが他の隊員にばれたら・・・多分、僕は・・・・"
「うん、ウチのこと、倒せって命令するよな」
  "・・・・・・"
「それでいいんだ、正一。そのためにウチはこそこそするんだ。見つかったらウチが悪い」
  "スパナ・・・ごめん"
「大丈夫。ウチにはキングモスカがいるし、正一の本心が聞けて、すごく嬉しいから」
  "スパナ・・・・っ"

涙声で、正一は、ウチの名を呼ぶ。

  "こんなこと、僕が言うのはおかしいのはわかってるんだ・・・・でも"



  "もし見つかったら、逃げてね・・・基地なんて壊しまくってもかまわないから"




      "お願いだから 
   
               ・・・死なないで・・・"




かすれた声が、ウチに甘く命令を下す。

「大丈夫、次に会うときは全部すっきりしてる」
  "スパナ"

うん、大丈夫。
だから

「ひとつだけ、お願い」
  "なに?"
「元気の出る言葉、言って」
  "・・・!"
「そうしたら、きっとウチ、すごく頑張れる」
  "・・・・Io l'amo・・・Io l'amo Supanner・・・・!"
「ん・・・ウチも、愛してる、正一」

チュ、と音だけキスを送って。



  "・・・じゃあね"
「ああ、あとでな」

プチンと切れた通信に、このあとやらなければならないことを反芻する。

大丈夫、ウチはうまくやる。
だから、そのときまで。






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09.02.18


Segretezza assoluta=絶対の秘密主義

言い訳というあとがき。


すみません!!!(ジャンピング土下座)
捏造しすぎです。

もしかしたら、あの二人は陰で連絡取り合ってて
こっそりと打ち合わせて知らない演技してて
スパナは知っててツナかくまってたんじゃないかなあ、とか。
(誰が来るとかは知らないけど、鍛えるための試練をとかそういうかんじで・・・)
あと、基地のすみずみまで見てた正一がスパナがいまどこにいるか、
4番ドックは現在誰がいるか・・・そういうの見ないはず無いと思うんだ・・・!とか
という妄想の果てにこんなかんじで・・・

・・・・現在を知ってるからこそできた妄想ですけど・・・!!!