Un gatto Spanner-2



スパナ猫シリーズその2






ウチは猫。名前はスパナ。
ウチは幸せな猫。


本当はここは誰も入っちゃいけないんだよ?
そういって正一はウチをそっと抱き上げる。

最近正一がウチを膝に乗せるテクニックを手に入れたので、
今日も少し硬い正一の膝の上で、グルグル喉を鳴らす。
機械の上のあったかいところも好きだけど、正一の膝のぬくぬくも好き。


正一は、今日も画面とにらめっこ。
不思議な文字がぐるぐると走っていく。
なんだかすごくファンタスティコ。

ふと眼鏡を外し、鼻をつまんでいるような動きをした。
目が疲れるとこうするんだよ、って言ってたのを思い出す。

ちらりとウチを見て、くすりと笑みを浮かべた。
くるんとした毛をそっと撫でて、喉の下をそっとくすぐる。

ウチは正一の癒しだという。
仕事が辛いときはウチで癒しを補給するのだという。

アニマルセラピーというらしい。

なでなではきもちいいからウチも正一から癒しを補給。
グルグル喉を鳴らすと満足そうに笑って、もっとなでなでしてくれる。

さながら正一セラピー?




…と、不意に画面が明るくなった。
正一の指がぴくりと固まる。


”やあ、正ちゃん!”

ウチは正一の膝にいるから机に隠れて見えないが、この声はびゃくらんだ。
正一はかちこちの顔して画面を見つめてる。

「白蘭さん…」
”どう?はかどってる〜?”

なんかいろいろ話してるけど、正一の声は始終疲れたようにかすれていて、
手はウチの背に乗ったまま小さく震えている。

なんでこんなに緊張してる?


”じゃあ、またね〜”

ウチには気付かないまま、びゃくらんの声がぶちんと切れる。
正一は緊張したままだ。

…ぺろり、と指をなめてやる。

「ひゃあっ」

正一は大袈裟に驚いて、ウチを見下ろした。

「なっ、何っ」

大丈夫か?

「す…スパナ…」

じっと見上げて、ほんのちょっと爪を膝に立てる。
ふにふにと踏めば、苦しそうだった視線がふっと緩んだ。

「…なぐさめてくれてるのかい?」

落ち着いたか?

「…大丈夫、ありがとうね」

正一の手がウチを抱き上げて、胸にぎゅうっと押し付けられる。

ちょっと苦しい。
でも、あったかい。

ざらりと顎の下を舐めてやると正一はくすくすと笑って、ウチを膝に戻して頭を撫でた。




ウチは猫だから仕事の手伝いはできないが、
こうして正一のそばにいて、
ぎゅってして、
話ができて。


だから
ウチは幸せな猫。



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09.02.09


正一はどうして白蘭におびえているのか。
その辺は想像におまかせd(笑
嘘です。
機械のある部屋って動物厳禁のところが多いので、スパナを入れていることが知られたら!とか
白蘭には無意識に苦手意識ありそうなイメージが。という感じで。
なんてらしいこと言ってますが、結局のところ、なぐさめるスパナを書きたかっただけ・・・!(笑