ウチの学校は、ホンマにアホばっかりや。
明日がバレンタインやのに休みやからって
わざわざ授業なくして、体育館に特設ステージ用意しよった。


SWEET Valentine’Day


一面に張られたビニールシート。
その中央には子供が入るようなプールがドンと置かれて
中には茶色の液体が甘ったるい匂いを吐き出しとった。

で、横に立て看板。

『ご自由にお入り下さい』


要するにアレや
人間チョコレートフォンデュ。

こんなん誰がやんねん、思うやろ?



「小春ーっ!俺の全てを受け取ってーーっ!!」

ドボンと飛び込んで茶色くなったユウジが小春に駆け寄ろうとして、チョコに滑って頭からコケた。

ゲラゲラ笑っていた謙也も冷たく笑う財前にケリ入れられてドプンと音を立て沈んでゆく。

「ぶはぁっ!何すんねん!」
「うわあ、めっちゃおとこまえになりましたやん」
「え?ホンマ?ってアホか!」

ビチャッとチョコまみれの手で財前にツッコミを入れて、またチョコの海に頭突っ込まれとる。


「助けんでよかと?」
「大丈夫やろ」

いつの間にか隣に立つ千歳を見上げれば、そういうもんかといった表情で
次々にチョコにトライする生徒たちを見つめていた。

「お前こそいかへんのか?」
「チョコは好きばってん、アレは流石に近寄れんばい」

だよな、と笑いあっていると、財前が気づいてこっちに近づいてきた。


「おはようございます」

さっきの一件のせいで財前もすっかりチョコまみれになっとる。

「随分楽しそうなことになっとっとね」

頬にまで飛んでいたチョコを指で掬い笑う千歳に小さく笑いかえし、財前はその指をぱくりと口に入れた。

「何しとっと」
「チョコついた先輩の指、美味そうやったから」
「それ言っとうなら、光のほうが美味しそうなことになっとるばい」

あかん。二人の世界がはじまってもうた。

すっかり二人の世界になってしもうた千歳と財前からそっと距離をとると、ズシッと肩に重みが乗っかった。
ぶわりと香ってくるチョコのむせ返るような匂い。

「…謙也、なんてことしてくれんねん」
「チョコ妖怪やで、蔵ノ介くん〜。さあ俺を食うてくれや」

チョコででろんでろんの謙也はそう言って、肩に乗った両手をずいっと前に突き出した。


…確かに、さっきの財前の言葉は間違ぅてへんなぁ。

目の前で広げられた手の、美味そうな親指をばくりと口に入れた。
どろりとしたチョコの甘さが口に広がる。

「うわっ!ホンマに食うやつがあるかいっ!」
「やって謙也美味そうなんやもん」

振り返りながらそう言い、チョコまみれの謙也の頬を指でなぞった。

ア ホ と書いて、指についたチョコを舐める。
茶色ごしでもわかるくらい真っ赤になった謙也が俺を見て口をパクバクさせていた。


…ホンマ、アホばっかりや。

「ほれ、部室行こうや。シャワー浴びよ」
「お、おん」
「ほんで全部食うてええんやろ?」
「ふぇっ!?」
「さっき言うたやろ?俺を食えや、って」

意味深に笑えばびっくりするくらいに反応を返す。



ホンマにアホすぎて愛しいわ。



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バレンタインなのでチョコレートwww

四天ならどんなことも行事になりそうなので、勝手に行事増やしました←
一度はやってみたいチョコ風呂(笑)
きっと最後にはユウジと小春が中でシンクロします←