まるで悪夢のようじゃ。
目の前で笑う男を見て、仁王はそう思った。
Mirror Lover
誰もいない部活棟は、どこか居心地の悪さを感じさせる。
テスト期間中だから、人がいないのは当然のことなのだ。
それなのに自分はそんなところで、
どうして椅子に縛られているのだろう。
「お目覚めですか?」
聞こえた声に、一瞬安心する。
そして思い出す。
ここに呼び出したのは・・・?
静かな場所でテスト勉強でもしませんか、と微笑んだのは?
視線を上げれば、ほの暗い部屋の唯一の光源である窓越し。
銀の髪が、光に透けていた。
「・・・・や、ぎゅう?なんじゃその格好」
声は確かに柳生のそれだ。
なのにその姿は、まるで・・・
「あなたはこの姿のほうがお好きかとおもいまして」
仁王そっくりな姿で優雅に笑う。
どうしてこんなときに入れ替わりをしなければいけないんだろう?
許容量を超えそうになってめまいがする。
「そりゃいったい・・・」
「おや、気づいていなかったのですか?」
あくまで愉しそうにそう笑って
仁王姿の柳生はそっと近づいてくる。
ひやりとした指が頬をなでた。
「貴方、入れ替わりしている私を見ているときの視線の温度が違うのですよ」
「・・・温度?」
「そう。まるで・・・恋をしているような」
うっとりと笑う、その目が不意に色を帯びる。
「不思議ですよね。貴方は私を見ているのに、その瞳に私は写っていないのです・・・それなのに、その視線に、酷く欲情するんです」
「な、なにを・・・言って」
「貴方が好きなのは貴方、なのですよ、きっと」
何を言っているのかぜんぜんわからない。
「・・・でも、私もこの思いを燻らせるには、深みにはまりすぎてしまっていましてね
」
目の前で笑う、その表情が
うっすらと色を変える。
紳士から、詐欺師へと。
「だから・・・『この姿で、お前さんを愛しちゃろう思っての』」
ぞくんとくる。
この声は、まるで己自身のようではないか。
目をきゅうっと猫のように細めて、悪戯げに笑う。
この男は誰だ・・・?
「やぎゅう、っ」
『なんじゃ、やっぱり興奮するんじゃな』
くつくつと笑って、その指が頬をすべり、首を撫でる。
ほんの少し、指に力を入れられて、苦しさに、身体が戦慄く。
『愛しちょうよ・・・雅治』
重ねられた唇は、指と相反して、生温かかった。
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82と見せかけて22!?いや、82・・・?みたいな(笑
この二人はゆがんでるくらいがちょうどいいと思います(いやいやいや
初テニスねたがこれってどうなんだろ・・・