朝早く、いつもの道。
隣には仁王くん。

朝練のために学校へ向かう道は人通りもなく
空気はピンと音がしそうなほど冷たい。

予報では明日あたり雪だという。



 冬の日



「うぅ…寒か…」

仁王くんはぶるりと身を震わせてマフラーに顔を埋めている。
そっと身を寄せれば、猫のように私の肩に頬を擦り付けてきた。

「柳生はあったかいのお」
「貴方が冷えているのですよ。…手を」

彼の真っ白な手は、寒さにすっかり指先が赤く染まっていて
触れるとひやりと氷のように冷たかった。
かじかむその手を温めるようにゆっくりとさする。

「…ほぅ…あったかか…」
「あぁ、指先までこんなに冷たくして…」

私の手に包まれた手が、ぬくもりに緊張を解いていく。
はぁ、と手に息を吹きかけてやれば
ほんの少し、目を笑みに細めて私を見つめていた。


「何故手袋を使わないのですか」
「じゃって…冷たくしとれば、柳生が暖めてくれるじゃろ?」


頬が熱くなるのを寒さのせいだと
誰にともなく言い訳して

「馬鹿なことを言わないで下さい」

と、彼の雪のような髪をそっと撫でた。


いつもどおり。
一日のはじまり。




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…なんだこの生温い二人(笑)

寒すぎる今日だから思いついた冬の82。