風に乗って、柔らかな匂いが鼻をくすぐる。
おはようの合図。

フレンチトースト

甘い匂いに誘われて、俺はキッチンへと顔を出した。
時間はいつもより1時間も早い。

「…おはよう、伸」
「当麻!嘘!?」

伸は一瞬慌てて時計を見る。
そして俺が立ってるのが迷惑だといわんばかりにため息をついた。

「脅かさないでくれよ…もう8時なのかと思ったじゃないか」
「失礼な奴だな」

伸の物言いに眉がつりあがる。

「ごめんってば。すぐに朝ごはんにするね」

慌てた様子で、伸はキッチンに駆け込んでいった。
俺はもそもそとソファに横になり、二度目の惰眠をむさぼろうと目を閉じた。


…いいにおい。




机の上には伸が読んでいたらしい新聞と、アッサムティー。
そして黄色く色づく匂いの正体。

ああ、フレンチトースト、お前だったのか。

詩人のようにそう呟いて、伸の食べかけに手を伸ばした。




「コラ、人のやつを勝手に食べない!」

伸ばした手をはたかれた。
そして、湯気のたつフレンチトーストを鼻先に揺らめかせる。

うまそう。

「ちゃんとソファに座って」

言うこと聞いちゃうのも癪だけど、食いッぱぐれはもっと癪。
俺はおとなしくソファに座った。

口に運んだフレンチトーストはサク、と歯ざわり良く、程よい甘さが口いっぱいに広がる。


幸せをかみしめてる俺をみて、伸も幸せそうに笑った。


たまには早起きもいいもんだ。




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ソファで二度寝はあたしの日課です(…
むしろ職場でも寝てるので、当麻より寝汚いのかも…

フレンチトースト、好きなんだけど、
失敗すると変な玉子焼きみたいになったり
全然味がしみてなかったり。
難しいんですよね。

伸は絶対失敗しなそうだ(羨望
まあ、あれですね。当麻自ら
「いい嫁さんになれる」宣言してましたし。