Trick or Treat。
お菓子をくれなきゃイタズラするぞ。
なんてかわいいお化けたち。
君にイタズラ仕掛けたいから
今夜のお菓子は…


ハロウィン


「ん〜っ!!旨い!」
「伸って料理の天才!」

皆から絶賛されているのは夕食のデザート。
今夜はハロウィンだから、とっときのレシピでパンプキンプリンを作ってみた。
バンプキンにはうるさい征士も唸らせた、まさに自信作。

作ったプリンは大きな一個。
それを8等分して皆に出した。
…残った2切れを更に半分にして、冷蔵庫にしまう。

「なぁ伸!!おかわりあるんだろ!」

目敏く聞いてきた秀に小さくウインクして、皆に聞こえるように振り返った。

「今日はハロウィンだから、お風呂上がりのお化けに残りはあげるよ」

皆が顔を見合わせる。

「合言葉はTrick or Treatだからね」

ニッコリとそう笑い、僕は自分の分のプリンを一口食べた。



「ごちそうさまっ!さて、風呂でも行こうかな〜っ」
「あっ!秀!ずるいぞ!俺も…!!」

秀と遼がそろって風呂場へと駆けてゆく。
征士も皿を台所へ置いて、風呂場の方を見つめていた。

「伸、パジャマどこだったかしら」

ナスティも入る気満々だ。


「俺、調べ物残ってるから。皆が出たら教えてくれ」

そう言って当麻は書斎へと入っていった。
…予想通り。





「俺いっちばーん!!伸!Trick or Treat!!」

秀がタオル一枚でかけてくる。
あーあ、床がびしょびしょじゃないか。

「秀!ちゃんと拭いてから出ろよ!!」

パジャマ姿の遼が湯気を立ち上らせてそう怒る。

「なぁ伸!」

僕にそう振るってことはきっと先に出たのは遼だったのだろう。

「わかったわかった。二人の分用意してあげるから、とりあえず秀、パジャマを着て、床を拭くんだよ」
「えぇ〜」
「じゃないとあげない」
「わぁったよ〜」

かくして、プリンは残り2切れになった。



「…伸」
「うわっ!!…征士か」

ソファで本を読んでいるといつの間にか風呂から上がったらしい征士が、僕を見下ろしてきた。
なにやら思案しているようで眉間に皺を寄せている。

「…なに?」
「…トリ・」
「とり?」
「とりっく・あー、なんたら、だ」

真顔でそういう征士がなんだかおかしくて、仕方ないなと冷蔵庫からプリンを取り出す。

「Trick or Treat、ね」
「とりっくおあとりーと、だな」

そう笑って征士は部屋へと上がっていった。



「伸、まだ残ってるかしら」

シャワーから上がったらしいナスティが、髪を拭きながらそう笑った。

「あるよ、合言葉をどうぞ?」
「うふふ、Trick or Treatね」

プリンにたっぷりクリームを添えて、ナスティに渡す。



さて、本の虫は未だ書斎だし、僕も入ってこようかな。








風呂から上がって、部屋へとあがる。
秀がいないけど、今日は遼の部屋でゲームすると言ってたからそのまま向こうで寝るんだろう。

…さっき風呂が空いたと声をかけたから、そろそろくるかな?
 一番ウルサイお化けが。
そう思いつつベッドに転がる。


「俺のプリンがないっ!!!」

ほらきた。
扉の向こうで聞こえた絶叫に寝たふりを決め込んで薄目で様子を伺う。
バタン!と盛大な音を立て、扉が開いた。
髪に水滴を残して、当麻は部屋を見回す。
近づいてくる姿に僕は目をしっかりつぶった。

「寝てるのかよぉ」

がっくりとした声が間近でして、ベッドがぎしりと軋む。

「あーあ、プリン〜」
「…そんなに食べたい?」
「うわっ、起きてたのか」
「ねえ、プリン。そんなに食べたかった?」
「そりゃあ…すごく旨かったし、伸なら俺の分残してくれるって信じてたのに…」

小さくむくれるその顔に小さくキスをする。

「でも残ってたの4切れしかなかったんだよね〜」
「そんなぁ…」

当麻はまるで空気の抜けた風船のように、ベッドに頭を載せへたりこむ。
そんな当麻の髪にそっと指を通し、ちらりと覗くうなじにキスをした。

「ぅわっ」
「ねぇ当麻、Trick or Treat」

耳にそう吹き込むと、当麻は不思議そうな顔をして僕を見上げてきた。

かわいい顔して。

「4切れしかなかったって言ったろ?」

そう囁いて無防備な唇を奪う。
当麻はと言えば未だ意味を理解していないように触れ合わされた唇を軽く噛み締めてる。
まったく大概鈍いよね。
まあ、そのほうがイロイロしやすいけど。

「Trick or Treat、だよ?」

もう一度そう言い、当麻の身を引き寄せる。
そして目一杯熱い吐息を絡ませ、こう囁いた。

「…イタズラ、させて?」

クスリ、と漏れた笑みは無意識のシロモノ。
その息ですら身をすくめる腕の中の人は、天性のスキモノ。
いつものすかした顔はどこへやら。

意味のわかったらしい当麻の顔はとたんに真っ赤に染まる。
もう、可愛すぎったらありゃしない。

ちょっと深く絡めあったキスだけで僕の腕に縋りつく。
甘い息を零しはじめた当麻はまるでイケニエ。

夜はこれから。





さあ、どこからイタズラして欲しい?





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ハロウィンということで、伸当でした。
伸がまるで悪魔…???

パンプキンプリン、この時期たくさん出るので
パンプキンプリンスキーなあたしには幸せな限りです。
最近ヒットはサンクスで扱ってるえぼしのパンプキンプリン。
限定ものだけあって、濃厚でめらっさうまかなのですよ!!!


…話がそれた(笑

感想等お待ちしております。