光などいらない




大人になったら…

「あの光に、手が届くかな…?」



闇の中、一点だけまばゆい天井を見上げ、マリクは細い手を延ばした。

『それはどうだろうな?』

心の中から声がする。


闇の中に置かれると人間は心の中に保守のため無意識に独自の世界を作り上げるらしい。
マリクの中にはもう一人の人格ともいえるマリクが…

…マリクが望む、強くて何者にも屈しない、破壊的な人格が存在していた。


『てめぇはそんなもんが欲しいのか?』
「だって、外は広くて、明るいんだって」

みたことない世界に夢を馳せるようなマリクにもう一人のマリクはふん、と鼻をならした。

「お前は、興味無し?」
『当たり前だ、闇の中のほうが広いし落ち着く。それに…』

右手が意思に関係無く動き、内股を撫でた。

『こっちのほうが興味あるな』
「やめろよ!」
『やめていいのか?』
「当たり前…っ」


自分の手なのにそれは他人のように這い回り、まだ他人を知らないマリクを煽り立てる。

「や・は…ぁっ」
『随分甘い声を出すようになったじゃないか?』
「ぅんっ…あぁん」
『一人でオナってるのと変わらないくせに、いつもより感じてんじゃねえのか?』
「ひ・ぅっ…」
『まぁ、…触っているのは、俺の手・だからな。ほら』

ぐりゅっ。

「ああっ!!」

刺激を早めてやるとマリクはあっけなく精を放ってしまう。

「はぁ…っ」
『お前は期待を裏切らねえな』


くすくすと耳もとに息がかかる。

そんなはずはないのに。

マリクはぞくりと身体を震わせた。


『…欲しいか?』

闇が身体に纏わり付いてくる…


『言えよ、下さいって』
「…っ!!   クダサイ…っ!!」

懇願するように叫んだ瞬間、闇がぐにゃりと姿を変えていった…



+++++++++



『もっと貪欲に俺を求めろ…そうすりゃあ俺は実体を持てる。お前をもっと楽しませてやれるんだ』
「ぅんっ…はぁ・」

闇に嬲られ、あるはずのない楔に猜れる。

「ひっ・ひっ・んんんっ」

マリクはよがりごえをあげ、縋るものを求めるが、伸ばした腕は宙をきるばかりだった。

「ひ・うっ・ああんっ…んんっ」

唯一しがみつける枕に歯を立て、マリクは中のものを締め付ける。


『イッちまえよ』

「ん・んぐ・んんっ…!!」

精液をぶちまけ、マリクはどろどろと意識を手放していった。



『お前は俺のものだ』

精液でべとべとになった身体を弄びながらマリクはにやにやと呟いた。



+++++++++



「さて、と」

マリクが失神してしまったのを確認してもう一人のマリクは表の精神に現れた。
自分が弄くりまわして汚した身体を、地下に流れる川で洗い流してゆく。



「なんであんなもん、求めるんだよ」

天に光る一点を睨み、マリクは布を身体に巻き付けた。

「お前も、光を…ファラオを・求めるのか?…」




「…それなら、世界を壊して、闇一色にしてやる。そうすりゃ光なんて…」


そう呟き、残酷な笑みを浮かべる。



マリクはベッドに横になって精神の中に沈んだ。

『俺はてめぇを離さねぇ…』


自分の半身を抱き締め、マリクは口を歪め、高く笑った。
未だ見ぬファラオを挑発するように…。





マリクの笑い声は、闇に響き、闇に吸い込まれていった。




                                END






+++++++++

◇ 2002/09 UP◇

◆ 闇マリク×表マリクでした。
イメージ的には彫られる前なのですが…そうすると9歳…?そんな激しい…(笑)
光琉設定では闇は小さな頃からマリクの精神に存在してます。
この二人は深く掘り下げて書いてみたいかも☆